普段私たちが生きている世界には、当たり前に「現在・過去・未来」がありますよね。
もし、「現在・過去・未来」がなくなったらどうなると思いますか?
想像してみてください。
さて、認知症の母はどうなのでしょうか?
私の母の今の状態は?
このブログを書き始めてから、母の認知症は緩やかではありますが、進行しているのは見ていてわかります。
処方された認知症薬は当然毎日1錠づつ飲んでいます。
でもこの薬は認知症を治す薬でも何でもなく、ただ進行を遅らせるもの=進行をゆっくりにするものです。
母は認知症診断を受けた当初、覚えていたことを今はもう忘れてしまっている、そんなことが増えてきました。
認知症の記憶障害とは?
認知症の方の記憶ってどうなるのか?について考えてみたいと思います。
認知症の症状には、多少呼び名が違うものもありますが、ざっと大きく分けると6つあります。
① 記憶障害
② 見当識障害
③ 実行機能障害
④ 失語
⑤ 失行
⑥ 失認
です。
上記は中核症状です。
これら中核症状が出ることで周辺症状である不眠、徘徊、過食、不安、イライラ、攻撃、無関心などがあらわれるのです。
なぜ、記憶障害が出るか?
それは記憶を司る脳の中の海馬が壊れてしまうからです。
認知症の初期には、短期記憶がなくなるという状態が出てきます。
短期記憶がなくなるとは同じ話を何度も繰り返す 鍵とか財布をどこに置いたか忘れる さっきの会話を忘れる などがわかりやすい例です。
そして人との約束を忘れるようにもなります。
外食先で食べたメニューやその時話したことも忘れていきます。
さらには外食に行った出来事をそっくりそのまま忘れてしまいます。
順番としては、先に短期記憶がなくなり、その後長期記憶がなくなっていきます。
短期記憶はついさっきの記憶、長期記憶は数か月~数十年ほどまえの記憶です。
認知症が進行してくると、
・昔の幼いころの孫ならわかるけど、大きくなった孫に会ってもよその人だと思う
・結婚している女の人の場合、自分の名前が旧姓だと思い込んでしまう
ということが出てきます。
記憶障害のほかにも、見当識障害 実行機能障害などもあります。
今日は何月何日か? ここは何県? 季節は? ということがわからなくなる(見当識障害)
料理や家事、ATMでお金をおろすなど日常の動作を忘れていく(実行機能障害)
母には、現在、過去、未来の区別はない
認知症の記憶障害によって現在 過去 未来の時間の感覚がなくなっていきます。
それによって、今の母の頭の中には、もう現在、過去、未来の区別はありません。
母は認知症になりかけたころには、よく「もう故郷に帰る!」と言って癇癪を起して泣いていました。
あの時、もっと早く母の故郷に連れて行ってあげればよかったと、私はその後何度も何度も後悔しました。
今の母は、遠い故郷のことを想うことも無くなりました。
この先どうしよう?これからどうしよう?
この前こんなことがあったから嫌だった、等々
先のことを考えて悩んで心配したり、過去のことを悔やみ、嫌だったことを思い出しては腹を立てることは、もう母にはありません。
今の母はすっかり穏やかです
最近の母はとても穏やかに過ごしています。
テレビを見て笑ったり、歌ったり。
ちょっと気に入らないことがあっても3分もしないうちに忘れて笑っています。
今泣いたカラスがすぐ笑ったですね。
なぜ母はこんなに穏やかなのか?考えてみました。
人は現在過去未来が頭の中にあるから、色々なことを思い出し未来の想像をしますね。
母には、そういう想像はありません。
母を見ていると、今という時間を楽しく過ごしているように見えます。
テレビを見るときも、食べるときも、集中しているのでしょう。
過去の嫌だったことはすっかり忘れ、未来のことも心配しない。
取りこし苦労がなく、とっても楽に生きているように見えます。
これは、心配症だった母には楽なことかもしれませんね。
本当に表情が穏やかなのです✨
認知症で忘れることは、悪いことばかりではないと母を見ていると思います。
とても幸せそうに見える母がかわいいと思えるようになりました。
もし、私たちの頭の中に「今」しかなかったらどうなると思いますか?
過去のことも忘れ、未来のことも考えない、楽しかった思い出を忘れることは悲しいですね。
でも、未来の心配はしなくて済みます。
そして、ずっと今が続くのです。不思議ですね。
どんなことにも集中できるかもしれません。
せっかく美味しいご飯を食べているのに、明日の仕事の心配をしたり、せっかく面白い本を読んでいるのに、昨日の喧嘩のことを思い出したり。
それってもったいないですね!
今やるべきことに集中する、今この瞬間を思いきり楽しまなくては!ということを母が教えてくれているような気がしてきました。
まとめ
認知症の記憶障害の色々と、認知症の母と接していて、感じた現在過去未来について考えたことを書かせていただきました。
母と接することで、母を含め認知症の方がとても明るい笑顔をしている理由がとてもよくわかってきました。
認知症は決して悪いことばかりではないと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。